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メンタルヘルス あるあるSOS

第3回会社の中で出来ること?

第1回、第2回では、良くあるメンタルヘルスのケースを実際に紹介して、うつやパニック障害などの病気について取り上げてきました。
今回は、過去のケースのなかから、よくあるケースを2つピックアップして、「そのときの上司の視点」からポイントを解説したいと思います。

  • ケース1 任せっぱなしのS課長
  • ケース2 集中力欠如営業マンの上司 朝令暮改、現場指示型T所長

イラスト:部屋のすみを青い顔をしてフラフラ歩いているAさん「プ・プロジェクトー」、それを遠くから眺める笑顔のS課長「A君、このプロジェクトが終了したら飲みに行こうな。君なら乗り越えられる。ここが成長のチャンスだ」、困り顔の女子社員「主任に聞こえるように言ってあげたらどうですか」

よくいる上司

第1回 ケース1登場の眠れない主任Aさんの上司 S課長(43歳)
4人家族
大手電機メーカー 技術職

課長になって4年目。プレイングマネージャー的存在で、多忙でありながらも、部下の面倒も見ている。やわらかい人柄で、皆の意見を尊重しながらチームをまとめていくバランスの取れた人物。仕事は部下に任せるタイプ。

よくある状況

Aさんの上司のS課長。Aさんをプロジェクトチームのリーダーに抜擢し、新しい仕事を任せた。やる気を見せるAさんを見て、「リーダーとしての経験を積んで、さらに伸びてくれるだろう」と感じ、彼の仕事には口出しをせず、見守ることに決めた。S課長自身も、出張や会議などで現場にいる事は少なく、実際にAさんの仕事を直接指導する機会は少なかった。また、Aさんから直接相談もなかったので、「Aさんのことだからうまくやっているのだろう」と考えていた。

ところがある日、「顧客から、大幅な仕様変更が入りました!」とAさんからあわてて連絡が。S課長自身、納期間近で対応が難しい事は分かっていたがAさんならできるという期待から「お得意様だからとにかくやりきれ!お前ならできる」とAさんにはっぱをかけた。彼も「大丈夫です!」と答えてくれた。

その後、Aさんの表情がみるみる精彩を欠き、凡ミスが目立つようになってきたが、自己の経験を思い出し、「自分も過去に、苦しい仕事をやり遂げた経験から成長できた。彼も今は苦しいだろうが成長するにはいい機会だ。プロジェクトが終了したら、ねぎらいの飲み会でも開こう」と考えていたのだった、、、。

ワンポイントアドバイス

メンタルヘルス対策では 「あの時、ああしていれば・・」「こうしていれば・・」という「たら」「れば」で後から思いつきそうなことを、その場でひとつひとつ実行していくことが重要です!簡単なようですが、これがありとあらゆる問題の発生を防ぐポイントになります。『周囲の気づき』が未然にメンタルヘルスの問題を防ぐ防波堤となるのです。

Aさんのケースをふりかえってみましょう。

◆労働時間が増えた原因を調べましょう
 部下の労働時間が増えているのなら、必ず原因があります。 部署やチームの合計労働時間が増えた・減ったで管理するのではなく、“個人”の労働時間の変化にも気を配りましょう。
 労働時間の増加に気づいたら、「最近、忙しい?」と聞くこともできます。たった一言のコミュニケーションですが、労働時間増加の原因を知るだけでなく、部下がかかえている仕事上の問題に気づくことができるかもしれません。

◆過去の経験を基準に部下を見てはいけません。
 「このところ疲れているようだ。」「最近ミスが多いな。」と、S課長は感じていましたが、それがSOSだということには気づきませんでした。そればかりか、自己の経験と今回のAさんを照らし合わせ、「仕事の苦しさは成長のチャンスだ。」と逆にAさんにはっぱをかけてしまいました。過去の自分の経験と照らし、Aさんにも出来るはずだと単純に考えるのは乱暴です。人によって置かれている環境、保持している特徴、得意不得意、仕事以外の生活(プライベート)などの様々な要因によって仕事の仕方もメンタルの状況も違います。自己の経験を基準に判断してばかりでは、部下の抱える問題に気づいてあげることはできないのです。

メンタルヘルスの問題を未然に防ぐには?

メンタルヘルスの予防で大切なことは、「SOSにいかに早く気がつくことができるか」だけと言っても過言ではありません。いち早くSOSに気がつくことが出来る人は、一緒に働いている上司・同僚ですね。では、どうすればより早くSOSに気づくことができるのでしょうか。

メンタルヘルスの知識を持ちましょう

より早くSOSに気づくことができるかどうかは、メンタルヘルスの知識があるかないかで違ってきます。同僚や部下の小さな変化やふとした違和感を気づきにつなげるためには、普段からメンタルヘルスについて知っておくことが必要です。

メンタルヘルスの知識を学べる環境を用意する
メンタルヘルスという言葉は世の中に溢れていますが、実際に自分たちの問題である、という認識が生まれなければ気づきにはつなげられません。新人研修・中堅社員研修などにメンタルヘルスの研修を組み入れ、組織全体で知識を深めている企業も増えてきています。社員研修といった大掛かりなものでなくとも、朝礼でメンタルヘルスに関連する記事を議題にしたり、社内報に特集を載せるなども、知識習得の良いきっかけになるでしょう。

コミュニケーションを活発化させましょう

上司が部下とコミュニケーションを取ろうとすると、部下にとっては『面談』という堅苦しい印象を与えてしまうことも少なくありません。面談の席では上司の評価を気にするあまり、苦しい状況であっても、「・・大丈夫です。問題ありません。」と事実と異なる報告をしてしまうかもしれません。
 そうならないように、日頃から声をかけたり、話を聞く等コミュニケーションを積極的に取ることによって、メンタルヘルスのサインに気づきやすい環境を作ることができます。普段は乗ってくるような話題に対して興味なさそうに振る舞ったり、遅刻ギリギリに出社するようになったり、急に昼食を食べなくなった、など“普段と違う”ズレを感じ取るためには、普段の様子を知っていなければなりません。

   

こうした対策を立て「病気を知り」、「日頃からコミュニケーション」を取ることが、変化を見落とさないという最大の予防策となります。

次回は、今までの内容のまとめとして、組織ができる対応を中心に予防・早期発見・復職支援(対処方法)について、ご紹介させて頂きます。

写真:なんこうしんいちろうさん

監修
南光進一郎

1972年東京大学医学部卒業。現在、帝京大学医学部精神神経科(メンタルヘルス科)主任教授。医学博士、精神保健指定医。【統合失調症患者の自立・就労を目指す薬物治療勉強会】世話人代表。
訳書:『分裂病がわかる本』 フラ・トリー著(監訳)日本評論社1997年。『分裂病の起源』 ゴッテスマン著(監訳)日本評論社1993年。『ホロコーストの科学』 ベンノ・ミュラーヒル著(監訳)岩波書店1992年等多数。