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メンタルヘルス あるあるSOS

第2回多様なメンタルヘルスSOS

「うつ病」のほかにも「躁うつ病」「パニック障害」など、多様なメンタルヘルスの疾患があります。さまざまなメンタルヘルスのケースとその特徴を紹介します。

  • ケース1 電車に乗るのが怖くなった女性社員
  • ケース2 平日は気が重いけれど、休日は元気な事務員
  • ケース3 やめられない、とまらない、確認しすぎ事務員

イラスト:電車の車内。隣には口を開けてよだれを垂らして寝ているサラリーマン。新聞を読む眼鏡をかけたサラリーマン。携帯電話を覗き込む女子高生。そこにD子さんがいる。両手を胸に当て、青い顔をしているD子さん。「わたしここで死んでしまうかも…」ドキドキ

完ぺき主義者のD子さん。
生真面目な仕事ぶりや資料の美しさは社内でも評判。
そんな彼女がある日突然「電車に乗るのが怖いんです。出社できません」と泣きながら電話をかけてきた。一体彼女に何が起こったの?

よくいる人

D子さん(27歳)
一人暮らし
化粧品メーカー 開発職 入社5年目

学生時代から憧れていた大手化粧品会社に入社。就職時に上京し1人暮らしをしている。
生真面目な性格で、職場のデスクはいつも整理されていて綺麗。資料も期日厳守、体裁も美しく、社内の評判は上々。仕事を完璧にこなす姿は後輩からも憧れられている。

よくある状況

入社5年目。新商品開発のチームリーダーとして、後輩2名を従え仕事をしている。数々の企画をチーム一丸となって作り上げ実績をあげてきた。しかし、今回は全く企画に合う商品が出来上がらず、近づく納期に焦りを感じていた。後輩の疲れた様子を見て、自分がリーダーとしての責任を果たせていないように感じ、そんな気持ちから後輩は帰宅させ、自分の残業を増やして対応していた。プライベートだけでも充実させたいところだが、家に帰るなりベッドにバタンキュー。起きたらあわただしく準備してすぐに出勤。日中は、眠気覚ましのコーヒーとタバコで気を紛らわせ、仕事に邁進していた。
そんなある日、出勤途中の電車の中で気分が悪くなり、胸がドキドキ。呼吸が苦しくなり、めまいも併発。「心臓の病気なのではないだろうか」、「このまま死んでしまうかもしれない」と、強い不安に襲われた。発作はその一回だけで再発はしていないのだが、「また起こるのではないか?」という不安から、その日以降電車に乗ることが恐くなってしまい、とうとう会社に行けなくなってしまった。

メンタルヘルスSOSはこの2つ!

◆突然の「死んでしまうのでは」と思うような発作(突然息苦しくなる、めまいがする、胸が苦しくなる等)
◆発作再発の不安にさいなまれる

ワンポイントアドバイス

几帳面、生真面目な仕事ぶりに周囲の評判も良かったD子さん。完璧主義の彼女は、目配り、気配りのできる優秀な社員です。彼女自身も、新たな商品を企画するという仕事に、充実感を味わっていたようです。しかし、納得のいく商品を企画できず納期が近づいているというプレッシャーと持ち前の責任感で、彼女自身が自分を追い込んでしまいました。
彼女の状況をまとめると

◆完璧主義で細かいことが気になってしまう
◆仕事等、精神的に追い詰められている状態が長く続く
◆タバコやコーヒーの量が増えている
◆肉体的に疲れている
◆がんばり屋で自己犠牲を払うタイプ

ある日、彼女を「死んでしまうのではないか」と思うような突然の発作が襲いました。

発作は
◆心臓がドキドキ、バクバクと早鳴る
◆突然息が苦しくなる
◆めまいがする

このようなものでした。
これらの状況、発作の症状、電車に乗れなくなってしまったことを考えますと、彼女はパニック障害になっている可能性があります。
パニック障害とは、このような発作を繰り返す状態のことで、若い女性に多い病気です。「心臓がドキドキする」というような発作の経験のある人は多いと思いますが、パニック障害という病気であると医者に診断を受ける人は発作を感じた人のごく一部です。

このような発作を繰り返す社員がいたら、まずは病院で診断を仰ぐようすすめましょう。パニック障害は職場の環境を整える・仕事によるストレスの軽減も大切ですが、自己のケア、考え方や気の持ち方を変化させることが治療の中で重要です。専門家の診断を仰ぎ、彼女の気持ち、状況を聞きながら対応をしていきましょう。

メンタルヘルスの種類や症状について

前回とは違う、一般的なうつ以外の精神疾患を3つのケースで紹介しました。しかし、この他にもさまざまな精神疾患があります。

・摂食障害
・対人恐怖症
・社会不安障害
・境界性パーソナリティ障害
・統合失調症
・依存症

等、名前をニュースなどで聞いたことのあるものや、ないものなど様々でしょうが、このような病気と戦っている人々は沢山いらっしゃいます。

そもそも、精神疾患は、どうして起こるのでしょうか。
原因は多様で、まだ良く分かっていないものも多いことが現状です。単純に“あいつは気が弱いから”、“親の育て方が悪かった”という問題ではなく、ストレスなどが原因となって、脳の中の神経伝達物質のバランスが崩れた状態となる事が問題となります。つまり、心が強い、弱いは関係なく、病気なのです。

お酒を飲み過ぎる人がすべて肝臓の病気になるわけではありませんし、タバコを吸う人が必ず肺がんになるわけではありません。しかし、飲酒・タバコなどのストレスによって発病の危険性は高まります。

・脳も同様です。脳内では「嬉しい」「悲しい」などの感情の変化が起こるたびに、神経伝達物質が分泌され、神経と神経の間で情報がリレーされていきます。ところが、ストレス等の外的要因によって、「嬉しい時」の神経伝達物質が過剰に放出された状態や「悲しい時」に放出される神経伝達物質が少なくなる状態が元に戻らなくなってしまうと、うつ状態になったり、身体の調子を悪くしたり、考え事がまとまらなくなったり、という様々な精神疾患の症状が出るのです。

たとえば、健康な状態を“弾力のある膨らんだ風船”としましょう。健康なときは、弾力があるため、少しくらい押されても元に戻りますが、ストレスを受けて何度も凹んだり押しつぶされたりしているうちに、元に戻る力が弱くなってしまい、最初は元に戻っていた形がだんだん萎んで、最後にはつぶれてしまいます。
そうなる前(メンタルヘルスSOS発信の状態)になっている時に適切な治療が必要なのです。
治療方法はさまざまですが、ここでは代表的な3つをご紹介させて頂きます。

休息

一番手軽で、かつ大切な治療方法となります。本来持っている自然な回復力を取り戻す事は大変重要です。単純に睡眠を取るだけではなく、リラックスする、適度に体を動かすことも効果的です。
当事者にとっては「仕事が忙しいので休めない」「この仕事が終わってから」など休めない理由が存在していると思いますが、「自分がストレスを受けている状態である」という本人の自覚が大切です。発病前の、SOSのサインが出ている状態で早めに休むことが、その後の回復を早めます。

薬物治療

メンタルヘルスの病気の治療では、薬物治療は基本中の基本となります。「薬に頼るなんて!」と思われるかもしれませんが、熱が出た時に解熱剤を飲むように、薬を飲んで、辛い症状を緩和させて治癒力を高めるのはとても大切です。
脳の神経伝達物質の乱れが元に戻るのには時間がかかるので、自分で判断せず、先生に決められた服薬をしっかり守ることも大切です。副作用が出たり、合う薬・合わない薬はあるので、困った事があれば自分だけで絶対に解決せず、主治医の先生と良く相談してみましょう。

認知行動療法

「考え方のくせ」をトレーニングで修正していく方法です。
人には知らず知らずのうちにそれまでの経験などから作り上げてしまっている“思考のくせ”があります。上司が不機嫌そうな顔をしていると「自分が悪いことをしてしまったのでは?」と考えてしまうなど、落ち込みの原因となうような思考パターンが存在します。その思考パターンを治療者と一緒に発見し、多面的な物事の見方や考え方をトレーニングしていく治療法です。この治療は再発防止にも役立ちます。

最後に

メンタルヘルスの病気でもっとも大切なことは、早く気がつくことです。
残業の状況や環境の変化、表情や仕事の集中力など、さまざまなSOSを見落とさず、早期発見・早期治療していくことがその後の復帰を早めます。また、周囲の理解も重要となります。病気に対しての理解がない状況では、安心して治療に専念したり、休息する事は出来ません。企業内における病気に対しての理解がとても大切になるのです。

次回は、企業内でのメンタルヘルス対策のあり方をお話します。

写真:なんこうしんいちろうさん

監修
南光進一郎

1972年東京大学医学部卒業。現在、帝京大学医学部精神神経科(メンタルヘルス科)主任教授。医学博士、精神保健指定医。【統合失調症患者の自立・就労を目指す薬物治療勉強会】世話人代表。
訳書:『分裂病がわかる本』 フラ・トリー著(監訳)日本評論社1997年。『分裂病の起源』 ゴッテスマン著(監訳)日本評論社1993年。『ホロコーストの科学』 ベンノ・ミュラーヒル著(監訳)岩波書店1992年等多数。