コミュニケーションの取り方に工夫や配慮を要するタイプの障害がある方を、持続的に雇用する際の具体的方策として、単なるセールス・ポイントの羅列に終わらない「紹介シート」や「面接シート」は、かなり有効だと感じました。しかも、職場事情等によって項目の立て方などに個別の改良を加えられる自由度が大きく、今後多彩に進化してゆけそうな仕組です。
前回の取材後記では、雇用された障害者の方が「申し訳ないような気持ち」を抱いてしまうのは、「採用枠がまだまだ限定的な現状では、とても正直な感覚」だろう、と書きました。しかし、この現状下でも、無用な申し訳なさなど感じずに気持ち良く働ける道があることを、今回、山中医師が示して下さいました。映像でも御紹介した、「《あなたが必要》っていうのを、きちんと言葉で伝える。それが一番大事だと思います。」という一言!
この山中医師のコメントには、実は続きがあります。「私達は、そういう《言葉にする》ことが苦手ですよね。夫が妻に愛を伝えることとか。でも、そういう言葉は大事なんです。」―――仰る通り。その苦手さを自覚して、意識的に敢えて言葉に出してゆくこと。周囲のそんな実践が、君成田さんの穏やかな自信に満ちた微笑みの源なんですね。
ところで、君成田さんのお弁当のエピソードが映像に出てきますが、実はあの時、私は同僚の皆さんに、こんな質問もしていました。「初めて皆さんと君成田さんが一緒にランチを食べた時の様子は?」 互いの緊張を解くアイス・ブレークは最初が肝心だったろう、と考えた私は、このランチにもATARIMAE化への小さな糸口があったのでは、と思ってこう尋ねたのですが、異口同音に返って来た答えは―――「覚えてないです。」
これには、ハッとしました。初めて障害者の人を仲間に迎えた最初のランチのシーンが、特に記憶に残ることもない《普通》の時間だったということは、この職場が如何に身構えず自然体で彼を迎え入れたか、の証左です。
節目節目に万全の“特別扱い”シートを整え、仕事の評価はハッキリ言葉で伝え、雑談タイムは逆に全く特別扱いしない。このメリハリ有る周囲の対応の中で、君成田さんは今日も「終(つい)の職場」に通い続けます。


























