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統合失調症~「あたりまえ」に働ける病気

第7回

(最終回)

1歩踏み出すことで世界は変わっていきます 
~「同じ職場の仲間」として共に働ける時代へ

統合失調症の人を取り巻く環境は、変わってきています。仕事をすること、恋愛や結婚をし、子供を育てること。誰もが人生に求めることを、「病気だから」とあきらめなくてもいい環境に近づいてきました。「本当は働きたい」と思っていた多くの人々や彼らの支援者にとって、理解が広がりサポートする制度が充実することを、長年待ち望んでいたのではないでしょうか。

一方、精神障害者の雇用が急速に拡大したことで、企業の現場にとっては戸惑いやトラブルもあるでしょう。統合失調症の人は、全般に作業能力に障害があります。一般企業の現場で必要とされる段取り力、コミュニケーション力はとくに苦手とする分野です。発病前の学歴や職歴とは関係ありません。「こんなに立派な学歴の人が、冷静に話しているから」と、履歴書や面接での受け答えだけで判断して期待し過ぎてしまうと、互いに「こんなはずではなかった」と齟齬が生じてしまいます。障害の特性を理解し、適切な指示を出していくことが大切です。とはいえ、「正しい理解」「適切な指示」と、あまりかしこまって考えすぎないことです。私の知るAさんの例を紹介します。

Aさんは統合失調症を発症した後、デイケアを経て、スーパーで働き始めました。同僚の多くは、パートで働く主婦の人たちです。集中力が続かずミスをしてしまったり、長時間勤務が辛く、遅刻や早退などを繰り返してしまったりなどの失敗もありました。しかし注意を受けながらもまわりが温かく接してくれるため、Aさんは長くスーパーの仕事を続けています。「おばさんたちに怒られることもあるけれど、話に加えてくれて、あなたも大変ね、と言ってくれます」

実はAさんは、職場に自分が統合失調症であることをまったく伝えていませんでした。Aさんに対する注意したり叱ったり褒めたり励ましたりという同僚や上司の態度は、障害者ではなく「自分たちと同じ職場の仲間」に対するものだったのです。

これまで統合失調症の障害特性や対応方法を紹介してきました。障害を理解してサポートしていくことが必要なことはいうまでもありませんが、それは専門知識を必要とするような「特別な配慮」とは違うのではないかと、Aさんの話を聞いて思いました。無理のない形で仕事ができ、作業の様子を観察し、必要な情報を伝え、間違いについては指摘し、互いに支え合うような環境があるならば、それが統合失調症の人にとって「あたりまえに働ける職場」なのかもしれません。ここで大切なのは、ご本人が働きたいという希望を持っていたことと、少々つらくてもへこたれず続けられたこと、それを支える家族や担当の医療関係者がいたことです。

働きたいと思う人、働いてもらいたい企業、そして支援者が連携していくことで、統合失調症の人の雇用機会は拡大します。トライ・アンド・エラーを恐れずに進むことで、「障害者が働く」ことは特別なことではなくなっていくでしょう。必要なのは最初の一歩。「ちょっとした関心」や「ちょっとした気遣い」で世界が大きく変わることを、多くの人に実感してもらいたいと願っています。(了)