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統合失調症~「あたりまえ」に働ける病気

第4回

職場選びと働き方の基本 ~「ちょっとした関心」を大切に成功体験を重ねる

統合失調症の人の多くが「本当は働きたい」と望んでいます。では、どういう仕事、働き方であればいいのでしょうか。

一般的なポイントは以下のとおりです。1・手順が決まっている 2・マイペースでできる 3・接客がない、または決まった手順で接客ができる、 4・フルタイムではなく短時間の仕事 となります。1から3までについては、統合失調症の人が「とっさの対応」や「変化」に弱いという特性が関係しています。あらかじめ手順が決まった仕事であれば、急に「あれをやって」「これをして」と指示されることがない。また接客が多ければ、どうしてもとっさの対応を迫られる場面が生じるでしょう。「接客があるからダメ」ということではありません。接客が多い職場の場合、どうしても臨機応変な対応や変化を前提とした仕事が多くなり、そうなったときの対応が難しいということなのです。もちろん中には接客が好きな人もいますので、その場合にはわかりやすい接客の手順があると働きやすくなります。

そして、もっと重要なのが「時間」です。統合失調症の人は疲れやすく、そして疲れても周囲にそれをうまく伝えることが苦手です。いまは精神障害者ステップアップ雇用など、週に10時間から徐々に労働時間を増やしていく働き方を支援する制度がありますので、ぜひこうした制度を活用し「1日何時間なら集中できる」など、働く側・雇用する側でよく話し合って調整をするといいと思います。

以上は一般的な対応ですが、この後、「では、どんな仕事が向いているのか」となると、人それぞれです。「手順が決まっているから、縫製や染色の仕事は」と提案しても、「細かく手先を使うことが苦手」という人なら辛いだけでしょう。細かい仕事が得意、身体を使う仕事の方がいいなど、向き不向きに個人差が大きいのは、一般の人も同じです。なるべく好きなこと、関心のあることを仕事にした方が長続きするのは、いうまでもありません。

大学在学中に統合失調症を発症し、就職をしたものの集中力が続かずにミスを連発、退職したSさんの例をご紹介します。Sさんは退職後、デイケアにも行きましたが、そこでも「こんな病気の人たちと自分は違う。一緒にしないで欲しい」と心を開きませんでした。Sさんは超一流大学の出身、同窓生はみな、テレビ局や商社などトップ企業で華やかな仕事をしています。このプライドの高さが壁になりました。統合失調症の人の場合、自分の病気や障害に対する自己認識に乏しいことも、障害特性の1つとして挙げられます。この場合、わからせようとして「あなたは病気なんだから」と指摘したり、懇切丁寧に説明したりすると、かえって混乱してしまいます。職場での成功体験を重ねることでこうした面も改善されていくのですが、そのためには先に紹介したように、「好きなこと」を基本に負担が少ない働き方をすることが重要です。

Sさんは、デイケアで出会った友人のアドバイスをきっかけに、少しずつ考え方が変わり、自分を障害者として受け入れてくれる会社で仕事をすることを決めました。何社かまわった後に就職した会社で、2年間、安定して仕事を続けています。では、Sさんはこの会社の「何」が気に入ったのでしょうか。聞いてみたら「オフィスが青山にあって、おしゃれして仕事ができるのが嬉しい」と答えてくれました。会社の場所や服装など、周囲から見れば「病気なんだから、そんなことにこだわらなくても」と思いがちなことが、本人にとって大きな意味を持ちます。「ちょっとした関心」が大切なのです。もちろんこの職場では、Sさんの障害をふまえてやりやすい仕事を工夫してくれたので、Sさんが「仕事を任せてもらえる」と感じたことも大きいと思います。本人が好きなこと・関心がもてることを尊重しつつ、少しずつ経験を積み上げることが、統合失調症の人が安定して働き続けるための基本になるでしょう。