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作業所「さくらんぼ」奮闘記-福祉と就労の間で-

第8回

「障害者が働く現場から学んだこと」

ある日のこと、市内の就労支援センターの所長さんから「重度の自閉症の人が働いている現場を見学しませんか」とお誘いをいただいた。
いずれも所長さんがジョブコーチとして長年かけて開拓してきた職場だという。
身近に重度の知的障害者が一般就労している例がなかったので、どのように働いているのか、とにかく見学することにした。

1社目は、食肉加工センター(牛肉、豚肉の卸問屋)。30代の男性が働く現場を視察。畜肉の臭いが充満している現場で、彼は処理された豚の部位を手際よくカートに積み込む作業をしていた。所長さんの姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきて、「○○さん!お仕事は、作業するだけでなくトラブルを未然に防ぐこともお仕事なんですね」と伝えてきたのにはビックリ!彼は今年で勤続6年。「お仕事楽しいです!」キラキラ輝いた笑顔が印象的だった。

2社目は、スーパーや弁当屋で使う食材の仕分けをする工場だ。30代の女性が、商品が入っていた段ボール箱の処理を担当している。
職場が冷蔵室なので、吐く息が白くなるほど寒い。厳しい環境にも関わらず、ジャンパーを着込んで、段ボールの片付けをテキパキとこなしている。彼女もすっかり職場に馴染んでいる様子だった。

3社目はおしぼり工場。30代の男性が働く現場を視察。
飲食店から運ばれてきた箱一杯の汚れたおしぼりを、分別する作業だ。
ものすごいスピードでおしぼりの種類や状態を見分け、箱に入れていく。決められた時間に従い、作業を終えると、「お先に失礼します」とさっと帰っていった。時間通りに終わらせるところに自閉症の特性が見られる。
職場の人は「彼はとても大切な仕事をしてくれている。彼がいなくては困るんだ」その言葉に思わず納得。

見学したどの職場でも、彼らは必要とされている。重度の自閉症の彼らを受け入れてもらうため、障害者と企業の橋渡しを続けてきて、やっとここまできたと、所長さんは話してくれた。見学でわかったことは、『彼らだからできる仕事がある』ということだ。どんな仕事でも、彼らは喜んで働く。障害者は雇用できないという企業は「どんな仕事をさせればいいのか」がわからないようだ。
ならば、個々の障害者の特性や能力を知っている支援者が、仕事の提案を積極的に行えばよいのではないだろうか。障害特性にピタっとあてはまれば真面目に仕事をする彼らは、即戦力にもなりうる。
彼らが働く幸せを感じられるよう、1人でも多くの障害者を世の中に送り出したい。今回の見学で、その思いはさらに強くなった。(了)


瞬時におしぼりを識別し、分別する自閉症の男性。