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作業所「さくらんぼ」奮闘記-福祉と就労の間で-

第3回

「やればできる!!」

知的障害者と聞くと、「何もわからない人」という印象を持たれる人は多いのではないだろうか。私もダウン症の娘を授かるまでは、障害のある人たちのことをまったく知らなかったので同じように偏見を持っていた。

しかし、娘と共に暮らした中で実感したことがある。それは、「時間はかかるけれど教えれば、やれないことはない」ということである。

さくらんぼの利用者さんの年齢は18〜60歳と幅広く、障害もいろいろ。ケーキづくりの適性を見極めるため、全員順番に工房に入ってもらうことにした。

自分の経験から「きっとやれる」という確信があったので、さほど不安はなかったけれど、ひとつだけクリアしなければいけない課題があった。

衛生面の指導である。ケーキをつくる前には、体を清潔にしておくということを一人一人に説明した。それでも「あれ?!昨日と同じ服?」「お風呂入った?」「爪が汚いよ」、次々に出てくる問題に戸惑う職員。しかし、ここであきらめるわけにはいかない。

「汚い服は、ばい菌がいっぱいいるので、お風呂に入ってきれいな服に着がえること」、「爪は切ってくること」「髪の毛は毎日とかすこと」、基本的なことを何度も繰り返し教える。それでも改善されない人には「お風呂入ってこなかったら工房には入れないよ」と、きつく言い渡した。皆ケーキづくりに参加したかったのか、利用者全員が、前日にお風呂に入ってくるようになった。

同じ頃、クッキーづくりの依頼もあったので、シフォンケーキよりつくり方が簡単なクッキーのレッスンから始めることになった。

まず小麦粉や砂糖の計量をして、粉類の扱いに慣れてもらい、次にバターを練る作業をしてから粉合わせ。先生と一緒に材料を混ぜてみて、感覚と手順を覚えていく。

繰り返し練習をした結果、シフォンケーキは無理な人でも、クッキーづくりなら参加できることがわかった。

そして1年後、軽度の知的障害がある31歳の女性が、クッキーもシフォンケーキもすべての工程をひとりでこなせるまでになり、先生から合格点をもらった。

聞くと、家でも練習していたとのこと。他にも自主トレをする人が出てきて、この頑張りには胸が熱くなった。

彼女の焼いたシフォンケーキをみんなで試食。「どお?」とはにかみながら聞く彼女。「すっごくおしいしいよ〜」みんなの感想を聞いて満面の笑み。「また頑張るね!」顔がきらきら輝いていた。

試行錯誤を繰り返して3年目。現在、シフォン製造に3名、クッキー製造に5名、ラベル貼りもいれると、ほとんどの利用者さんが関われるようになった。成長するには時間はかかるけれど、彼らは「やればできる!!」と自信をつけ始めている。