視覚障害者向けの音声拡大読書機「よむべえ」などを販売している会社「アメディア」の代表取締役社長、望月優さんのお話を聞くことができた。
「社長の心のエネルギーが、会社のエネルギー」は、配布されていたレジュメのタイトルに書かれていた言葉だ。
これは、望月社長が念頭に置いている経営理念といってよいものだろう。
アメディアは、1989年に設立。設立8年目までは自転車操業だったが、1996年に発売した印刷物読み取りソフト「ヨメール」が大ヒットし、年商2億5000万円の会社に成長する。
しかし、その後、業績が急落。「いつ倒産してもおかしくない状況」が6年ほど続いたが、現在は回復基調に入っており、業績は、年商3億円、経常利益1500万円だという。
望月社長ご自身は、全盲だ。
また、アメディアには14人の従業員がいるが、そのうち精神障害者が2人、視覚障害者が2人働いている。
私が興味を持っていたのは、障害を持つ方が、どのようなお仕事をされているのかという点。特に精神障害者の方は、日によって心身の状態のアップダウンがあると聞いたことがあったため、そのような状態でも働き続けられるような環境や体制をどのようにつくっているのかということが気になっていた。
アメディアという会社はどんな会社なのか、望月社長はどんな方なのかという興味もあり、お話を聞くのを楽しみにしていた。
望月社長については、「会社を立ち上げるくらいだから、とてもエネルギーがある方だろう」と考えていたが、私の想像以上に、エネルギーに溢れた方だった。
しかし、「目標目指して、まっしぐら」という猪突猛進の感じではなく、目の前にある状況やご自身を冷静に省みる方だという印象を受けた。
「5年くらい前まで、努力がすべてのものを解決すると考えていました。努力は大切だが、しかし、何のために努力するのか。他の人が楽しく生きられるように努力しようと考えました」。
「死ぬまでいろいろな感情を持ちますが、人生の質は、感情の質だと思います」。
望月社長は、こう話した。
私は、次のように受け止めた。
「私が頑張ればなんとかなる。私が頑張らなくてはいけない」という考え方では、従業員や周囲の人の気持ちを推し量る部分が少なくなる。
それに対して「楽しく生きる」を価値観に入れたとき、自分だけでなく、従業員や周囲の人の幸福も考えるようになる。
社員1人ひとりの気持ちや、それぞれが抱えている状況などまで推し量るようになった時、相手に配慮した話し方ができたり、ちょっとした一言がかけられたりして、人間関係が良好になるのではないだろうか。職場の雰囲気が良くなれば、仕事もはかどるだろう。
望月社長のお話のなかには、次のような指摘もあった。
職場のなかで何か上手くいかないことについて、誰か一人を叱っても、たいていは上手くいかない。個人は責められると、やる気も、行動も下がってしまう。こうしたことが続くと職場全体の雰囲気も下がってくる。
誰かを責めるのではなく、「なぜ、上手くいかないのか?」の「なぜ?」を一緒に考えていく姿勢を持つこと。
従業員が明るく、元気に働けるように、励ましたり、一緒に喜んだりしていくこと。そんなことを心がけているという。
これは、職場を活性化していくために、経営者だけでなく、職場のチームの管理職、後輩の面倒をみている先輩などにも参考になる考え方だと思った。
望月社長は、精神障害者を雇用している理由について、
「心のエネルギーが弱い精神障害者が良い状態で働くためには、明るく元気で仲が良い社風が必要。精神障害者の勤続年数が、その職場が働きやすいかどうかのバロメーターの1つだと考えているからです」と話した。
「働く職場」を、「暮らす地域」、「生きる社会」と言い換えても通じるようなとても深い言葉だった。
2010年5月アーカイブ
それは、「ぷかぷか」のお店の特長について考えたところで、
>「ぷかぷか」のお店の特長を簡単に紹介すると、主に2つ。
>1つは、素材にこだわり、安心して食べられるパンを製造販売していること。
>2つめは、障害者と一緒に働く場であることだ。
と、書いた部分だ。
間違いだったかもしれないのは、お店の特長をあげた「順番」だ。
2つめにあげた「障害者と一緒に働く場であること」を、まず、1つめにあげるべきだったかもしれないと感じている。
「ぷかぷか」のお店をつくるには、それなりにお金が掛かっている。
高崎さんの自己資金だけではなく、横浜市などの行政や財団などから頂いた複数の助成金、「ぷかぷか協力債」を購入してくださった方も少なくないと聞いている。障害者自立支援法の「A事業所」であるため、法律に基づいて、障害者雇用支えるためのお金も頂く。
行政や財団の助成金は、一般的なパン屋さんでは頂くことができないものだ。
「障害者が働く場をつくる」という社会的に意義のある場だからこそ、「それなら、お金を助成しましょう」となったのだと思う。
「ぷかぷか協力債」を購入してくださった方の多くは、「障害者が働く場をつくる」という目的に賛同してくださった方に違いない。
これらのお金が集まらなければ、あの素敵な店舗はできなかったし、厨房のパン焼き釜も、パン作りの道具も購入することができなかったはずだ。
オープンのときに足を運んでくださったお客さんのなかには、高崎さんやメンバーの関係者、障害者に関わるお仕事や活動をしている人もいた。これらの方々は、「ぷかぷか」が「障害者が働く場」だからこそ、「応援しよう」という思いを持って足を運んでくださったように見えた。
そう考えていくと、「ぷかぷか」の特長は、まず第一に「障害者が働く場」としなければいけない気がしてくる。
もちろん、収益をあげて、経営を安定させなければ、お店は維持できない。
「素材にこだわり、安心して食べられるパンを製造販売していること」という特長も大切だ。
経営者でもスタッフでもない私が、とても偉そうなことを言ってしまうけれど、やはり「障害者が働く場」という特長が欠けてはいけないと思う。
「障害者が働く場」という特長が欠けるなら、お店をつくるためにこれまで頂いたお金はすべて返金して、新たに、一般的なパン屋さんとして出直すしかないように思う。しかし、そうなった時のパン屋さんは、もう、「ぷかぷか」ではなくなっている気がする。
「ぷかぷか」を撮影したり、ブログに書いたりしていることを第三者に話すと、「あなたは、なぜ、そのような活動をしているのですか?」という質問を受けることがある。
似たような質問は、これまでも何度か受けたことがある。
10代から付き合いのある友人から尋ねられたこともあるし、最近、親しくなった方から質問されたこともある。
私は、NPO法人OurPlanetTVや、国際障害者スポーツ写真連絡協議会(パラフォト)を通じて、障害者の創作やスポーツについて記事に書いたり、映像作品を制作して発信してきた。
たしかに、「障害」にこだわっているのは事実だ。
プライベートな時間を使って障害者に関わる場に足を運んでいるので、他人から見ると、「なぜ?」という質問が出るのも自然なことかもしれない。
しかし、「なぜ?」と聞かれたとき、私は答えに困ってしまう。
強いて答えを出せば、「障害者が気になる」ということだろうか。
そして、「自分自身が、障害者だったら?と想像することがあります」と説明する。
障害を持っていても、居場所がある。
さまざまな人と関わることができる。
仕事があり、収入があり、自立ができる。
1人の人間として存在価値を周囲の人に認めてもらえる。
活き活きと、楽しく、自分らしく生活できる。
障害を持っていても、そんな社会で生きていけたらいいなと思う。
しかし、「自分が、障害者だったら?」という視点で考えたとき、目の前にある状況や、世の中について、「これは、気持ちがよくないかもしれない」「もっと、こうだったらよいのに」などと感じることがある。
理想と現実の溝(ギャップ)を感じたとき、それに対して、知らない顔をするのは嫌な性分なのかもしれない。少しでも何かしたい気持ちになってくる。
なぜなら、障害を持つか、持たないかは、個人が選んだものではないからだ。
私が、障害を持たずに生まれ、生きてきたことは、偶然だったといえる。
障害者が抱える問題は、いつか、私自身の問題になるかもしれないと思う。
障害者のために何かをしてあげたいというよりも、自分のために何かしたいのだろう。




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