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2010年4月アーカイブ

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横浜市緑区の霧が丘グリーンタウンの商店街に、カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」がオープンした。

 

オープニングパーティでは、まず、「ぷかぷか」で働く障害のあるメンバーが挨拶。

「黒色テント」のメンバーによる宮沢賢治の作品の朗読や、ろう者と聴者がともに活動する人形劇グループ「デフパペットシアター・ひとみ」の人形劇、「風の器」で活動するろう者の俳優である庄崎隆志さんのパフォーマンスがおこなわれた。お店の前には数十人の人が集まり、まるで小さな野外劇場のようだった。

 

以前から「ぷかぷか」を応援してくれている人、プレオープンで開店を知っていて楽しみにしてくれていた人、近所の保育園に子どもを預けているお母さん。霧が丘グリーンタウンに住んでいる人。さまざまな人が集まり、開店と同時に、お店の前にはお客さんの列ができた。カレーパンやアンパン、肉まんなどは、早々に売り切れていった。

 

「ぷかぷか」のお店の特長を簡単に紹介すると、主に2つ。

1つは、素材にこだわり、安心して食べられるパンを製造販売していること。

2つめは、障害者と一緒に働く場であることだ。

 

ぷかぷかで販売しているパンは、国産小麦、天然酵母を使い、卵や牛乳、ショートニングなどは使わない。バターも一部の製品に使っているのみ。

私は食パンを1斤購入したが、帰りの電車の中でパンを入った袋の中から、ほんのりとよい香りが漂っていた。パンを口入れて、噛めば噛むほど甘みが増すような気がするのは、素材がよいからだと思う。

 

 2つ目の特長である、障害のあるメンバーと一緒に働く場としては、どうだろう?

 

お客さんに「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」をはっきり大きな声で言えるメンバー。お客さんにしっかり対応できる、商品を袋に詰めることがきちんとできるメンバーの姿は頼もしく見えた。

 

障害のあるメンバーはそれぞれ、得意、不得意がある。それぞれに適した働き方を探り、それぞれの仕事をこなせるような場をつくっていくのはこれからかもしれない。

 

簡単に書いてしまったが、カフェ&ベーカリーとして収益を上げ、経営を成り立たせることと、障害のあるメンバーが楽しく働ける場を両立することは、とても大きな課題だと思う。

 

 半年ほど前、あるテレビ番組で、障害者が働くパン屋「スワンベーカリー」を開店した女性店長が紹介されていた。開店から数年を経て経営難となり、その店舗は閉店した。彼女は、今、福祉の枠で障害者と接しているという内容だった。

 

「福祉と、経営の両立は、難しいと思います」

店長だった女性のコメントは、とても重かった。

 

「ぷかぷか」は、今日、お店の扉を開けた。

これから先が、本当のはじまりだと感じている。

 

■高崎さんによる「カフェ&ベーカリーぷかぷか」のホームページ■:

http://homepage3.nifty.com/pukapuka/

 

 

pure hanbai1 atu.jpg「これ2つ、ちょうだい。いくらなの?」

「・・・・」。

「値段を貼っておかないと分からないわよ」

お客さんの顔は「しょうがないわね」と言っている。

 

また別のお客さんがお会計をする場面。

「えっと・・・」。

少し時間は掛かるが、暗算はしっかりできるメンバーが対応しているのだが、お客さんは不安顔になっている。

300円渡して、260円だから、おつりは40円」。

お客さん自身が計算し、おつりを受け取っていく。

 

カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」のオープンは、あと1週間ほどに迫っている。

厨房では、パンの製造に試行錯誤。

厨房のスタッフによると、天然酵母を使っているため、毎日、焼き上がりが異なり、なかなか思うようには出来あがらない。お店で販売するには、いつも一定の水準以上の商品が焼きあがるようにすることが必要だが、今の段階では「焼きあがりを見るまで安心できない」状態にあるという。この日は、食パンのほか、ロールパンやアンパン、揚げパン、カレーパンなどさまざまなパンを試しに焼いたが、焼きあがりの時間帯は、かなり張り詰めた空気が漂っていた。

 

店舗のほうは、まだ、完成していない。パンを販売する部分の仕上げに、まだ少し時間がかかりそうだ。この日は、工事中の店舗の一角にパイプ机に並べて、出来上がったパンを販売した。午前1130分から午後2時ごろまでの時間限定の試験的な販売だ。

 

「おぃしーパンは、いかがですかぁ?」

メンバーのひとりが、お店の前に立ち、通りを歩いている人に向かって声を掛ける。

小雨混じりの冷たい風が吹く日だったが、元気のよい声が響きわたる。その声に引き寄せられるように、お店のほうへ足を向けてくれる人がいた。

 

製造するパンの種類や内容はまだ流動的で、パンの種類や内容は、毎日、変わる。パンの種類が変われば、それにともない、価格も変わる。

 

このため、パンを並べ始めた時点では、スタッフがそれぞれのパンの値段を確認できていなかった。お客さんから「いくらなの?」と尋ねられてから、値段を確認しにいったり、商品の大きさに適当なビニール袋がすぐに見つからず、ばたばたと対応していた。

 

「値段は、はっきり分かる」「販売やお会計で、お客さんを待たせない」。

こうしたことを求めているお客さんは、試験的な販売とはいえ、「ぷかぷか」の対応の不十分さに不満を感じていただろう。わずかだが、そういう不満を滲ませているように見えたお客さんがいた。

 

一方で、「そこの保育園に子どもを預けているんですけど、何のお店ができるのか、子どもと楽しみにしていたんです」と声を掛けてくれる人。

「オープンは、いつなんですか?」と期待を持って尋ねてくれる人。

「あれも1つ、これも1つ」とさまざまなパンを購入してくれる人もいた。

 

あるお客さんは最初は急いでいる様子だったが、障害のあるメンバーが対応していることが分かると、少し時間が掛かことを受け止め、待つ姿勢に切り替えてくれたようにも見えた。

 

お客さんは、千差万別だ。

数時間の販売だったが、そんなことを実感した。

 

いろいろな要求を持っているお客さんたちから、「このお店は、いいね」「また、買いに来るよ」と口々に言ってもらうには、どんなことが必要だろうか?。

 

パンの製造から販売までの、1つひとつの工程で、細かい努力を積み重ねていくことだろうか。

 

たしかに、一般にあるパン屋さんと比べて見劣りしない対応、サービスは必要かもしれない。

 

しかし、すべてが同じでなくてもよいのかもしれない、とも思う。

 

たとえば、お会計では、金銭の計算を間違えずにできることが大事だが、間違いなくできるなら、ほんの少し余計に時間が掛かってもよいのではないだろうか。

 

「緊張するので、ほんの少し時間はいただきます。しかし、しっかり会計します」ということをお客さんに理解してもらい、安心して待ってもらえる工夫をする。そんな工夫があり、お客さんに納得して待っていただけたなら、他のお店と同じようなお会計の「素早さ」は追求しなくてよいのかもしれない。

 

メンバーのみんなが頑張っている様子を見て、そんなことを考えた。

 

「ぷかぷか」に流れている時間は、他の多くのパン屋さんに流れてる時間と異なるかもしれないが、その時間の流れをお客さんに共有してもらえると、これまであったお客さんの不満が不満ではなくなるのかもしれない。

 

  カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」は、4月下旬にオープンする。

高崎さんやスタッフの皆さんは、お店に必要な備品を整えたり、障害者雇用・就労に必要な書類を作成したりという作業に追われている。これから試作品を制作してお店を宣伝したり、みんなでパンづくりや販売の練習に入る予定だ。

 

「お店が軌道にのってほしい」

「地域の人びとから、応援してもらえるようなお店になったらいいな」

「お店は大事だけど、高崎さんや、スタッフの皆さんが過労で体調を崩したりすることがないように」・・・。私の心の中にはさまざまな思いが到来する。

 

しかし、私自身について考えるとき、「所詮、私は傍観者にすぎない」と自覚する瞬間もある。

 

この取り組みを映像で記録するという役割はあるが、遠距離から撮影にでかけていることもあり、私は「ぷかぷか」の仕事の一部を具体的に担えるわけではない。

ドキュメンタリーを作ること以外にできることは、私自身が感じたことや考えたことを伝えることくらいだろうか。

とはいえ、具体的に手を出さない、見ているだけの人間が、分かったような顔で発言するのはおこがましいように感じることもある。

 

いろいろ考えてみるが、結局、私にできることは、「ぷかぷか」のことをたくさんの人に知ってもらうことかもしれないと思う。

 

「今、こういう取り組みを撮影させていただいています」。

どこかへ出かけたとき、初めて出会った人にも、「ぷかぷか」の話をしてみる。このブログを紹介してみる。興味を示してくれる人もいる。経営や事業計画について感想をくれる人もいる。これからお店がオープンしたら、「パンを買いに行ってみよう」と考えてくれる人がいるかもしれない。「ぷかぷか」に何か困ったことが発生したとき、知恵を貸してくれる人もいるかもしれない。

 

そんなことを考えている。

 

3月29日(月)、東京都内で開催されたISL(アイ・エス・エル)主催の第2回SEOYキックオフ・フォーラム(第12ISL社会イノベーター・フォーラム)に足を運んだ。参加の動機は、ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さんと、社会起業家フォーラム代表の田坂広志さんのお話を聞いてみたかったからだ。

 

 石川治江さんは、障害者との出会いから介護・福祉分野に興味を持ち、1978年に生活支援ボランティア組織をつくった。その後、1987年に非営利の民間福祉団体としてケア・センターやわらぎを設立。介護保険制度がない時代から、介護・福祉分野のサービス提供に取り組んできた人だ。

 サービスを始めた当初は、お年寄りの生活支援を目的に訪問したスタッフが、訪問先の家族から「お手伝いさん」と呼ばれたこともあったという。「介護は、嫁の仕事」の時代で、生活支援サービスについて認識されてはいなかった。そのようななかで、「地域で暮らしたい」という障害者・高齢者に応えようと、24時間365日の在宅福祉サービスをやると打ち出し、「どんなケースも断らない」と決めて取り組んできたそうだ。

 

 「お金がない、場所がない、人がいない・・・断る理由はいくらでもあります」

  石川さんは、こんな指摘をした。

 「できない」「駄目だ」という議論を、いつまでしても意味がない。

「やる」という姿勢で考える。心がけるのは「やろう」「知ろう」「学ぼう」ということ。

ただし、やみくもに何でもやるということではない。

 

「夢を現実にするには、情報をとれなければいけない」

石川さんは、こう話した。

夢を現実にするために、もっとも適切で、現実的な手段を探していく。

さまざまな情報のなかから、最適な手段を選択していく。そのようなことを言われているのだと解釈した。

  

  講演の後の時間で、私は、次のような質問をした。

1つの事業を起こそうとしているとき、1人でやれることには限界がある。周りの人や地域の人を動かしたり、巻き込んでいくことが必要になってくると考えている。人を動かしたり、巻き込んだりすることを、どのようにつくっていけばいいか?。そういうことについて、何か感じていることはありますか?」

 

 石川さんの答えは、こうだ。

 

動かそうと思っても、人は動かせない。

社会に存在している何かを変えたいと思う時、現状に対して「おかしい」とか、「怒り」を感じているはずだ。その思いを人にぶつけていく。言葉で伝えていくことだと思う。

そして、どんな状況にぶつかっても、それを面白がれる能力を持つこと。暗い顔をしている人と何かを一緒にやりたいとは思えない。面白がれる能力を持つ人には、「あの人は面白そうなことをやっているようだ」と、自然に人が集まってくる。

 

プロフィール

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  • 由香里
  • 出版社勤務の会社員ですが、障害者に関連するテーマで取材し、市民メディアOurPlanetTVのWebサイトなどで発信しています。障害者の就労について関心があり、働く場が広がっていくような情報発信をしていきたいと考えています。
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