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2010年1月アーカイブ

 

 障害者が働くカフェ&ベーカリー「ぷかぷか」を実現するうえで、もっとも大きな課題は資金の問題だろう。

 

「ぷかぷか」に限らず、ビジネスをスタートするのに必要なのは、まず、お金。

高崎さんがつくった事業計画では、「ぷかぷか」を立ち上げるための資金として、約2700万円が必要になる。

 

手作りのパンを焼いてお店に出すためには、借りた店舗の改修工事が必要だ。それから、パンをこねる機械や、パンを焼くオーブンが要る。カフェを併設するには、テーブルや椅子、お手洗いも備えないといけない。改修工事や設備投資、什器備品などの費用と、仕入れ費用や1カ月分の運転資金をあわせると、計2700万円という金額がはじき出される。

 

 高崎さんは養護学校の退職金を「ぷかぷか」のために使うつもりだ。また、空き店舗の活用や障害者雇用促進に関連して応募できるいくつかの助成金を申請した。さらに、「ぷかぷか協力債」という債権をつくり、資金面での協力を募っている。債権は額面1万円から5種類あり、利息はないが、購入者には額面2%程度のパンをプレゼントするかたちにした。

退職金と各種の助成金、「ぷかぷか協力債」と借入金をあわせて、なんとか2700万円を工面しようとしており、数種類の助成金は申請が通り、「ぷかぷか協力債」にも購入者が現れている。

しかし、こうして集めるお金が、現在、すべて手元にあるわけではない。高崎さんの退職金が入るのは4月以降、助成金のいくつかも年度始まりとなる4月以降に入金されるという。つまり、「入る予定」の資金を手にするにも、まだ少し時間が掛かる。

 

一方で、空き店舗の改修工事の契約や着工には、その都度、支払いが必要で、今春のオープンを目指すというスケジュールに従うと、当然、資金の入金よりも、支払いが先に発生することになる。

 

このため、高崎さんは、「ぷかぷか協力債」への協力を再度、呼びかけている。

 

 「ぷかぷか」の動きに興味を持って追いかけている私自身は、30代半ばの会社員だ。

「自分自身だったら、2700万円の資金をどう調達するか?」と考えてみるが、助成金や債権を活用することを考慮に入れても、それは必要な資金の一部を賄うにすぎないと受けとめる。「本当に借り入れができるのか?」「借り入れても、返していけるのか?」などなど、さまざまな不安に駆られてしまう。私自身が経営者には向かないタイプなのかもしれない。

しかし、2700万円は、よほどのお金持ちでないかぎり、「ちょっと挑戦してみる」「面白そうだからやってみる」という程度の気持ちでは手が出せない金額だ。人生を賭ける覚悟が要ると思う。

 

2700万円という金額は、高崎さんが描いた「ぷかぷか」の夢を現実にするための値段だ。

しかし、「夢を現実にするのは、けっして、たやすいことではない」と感じている。

 

 

 

 養護学校の先生をしている高崎明さんは、定年退職を機に、来春、知的障害者が働くカフェベーカリー「ぷかぷか」を立ち上げようとしている。

高崎さんと話をすると、「障害のある彼らと一緒に生きていきたい」という言葉が繰り返し出てくる。養護学校を退職した後も、彼らのそばにいて、彼らの魅力を感じていたいという思いを強く抱いているのが分かる。

「ぷかぷか」は、高崎さんにとって「彼らと一緒に生きていきたい」という思いを実現する場所だ。彼らと一緒に生きる舞台を、「養護学校」から「パン屋」に移そうとしているのだろう。

 

 「ぷかぷか」という場をつくることは、養護学校を卒業した生徒たちの「行き場」をつくることでもある。

 高崎さんによると、養護学校では生徒の数が増えている。学校では教室や教員を増やすなどして生徒の受け入れに対応するが、卒業後の就職先が十分だとはいえない状況にあるそうだ。障害者が働く場としては「作業所」「授産施設」などもあるが、工賃は安い。「ぷかぷか」で受け入れることができる障害者は10人だが、高崎さんは最低賃金を支払う計画を立てている。

 

 「ぷかぷか」では、美味しく、安心して食べられる手作りパンを製造、販売する。

  材料には天然酵母、国産小麦を使い、アトピーの子どもでも食べられるように、卵、牛乳、ショートニングなどは使用しない。生地を仕入れて店内で焼くかたちではなく、生地から製造し、焼き上げる。他のパン屋さんに負けない味を目指すつもりだ。

 

釜から出したばかりの焼きたてパンがお店に並ぶ。

店内の喫茶スペースでは、美味しそうな香りに誘われてやってきたお客さんが、パンに舌鼓を打ちながら、ほっと一息つく。

働いている障害者たちはお客さんに元気にあいさつする。

「ぷかぷか」のスタッフ、お店にやってきたお客さん、商店街や地域の人々みんなが自然に笑顔になれる・・・。

高崎さんが作成した「ぷかぷか」の事業計画からは、そんなイメージが沸いてくる。「ぷかぷか」のホームページに掲載されているお店のイメージ画を見ると、宮崎駿アニメか、絵本の中から出てきたような温かみのあるパン屋の夢が膨らむ。

 

 しかし、夢を描いて終わりではない。

「ぷかぷか」の夢を実現するために、高崎さんは20086月から準備を進めてきた。横浜市の霧が丘グリーンタウンの空き店舗を確保して、お店の場所は決まった。ただし、夢を実現するには、いくつかの課題が残されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、受信したメールに、こんな文章があった。

 

 「私は今、すっごく楽しいです。60才にしてこんなに楽しい日々が来るとは思っていませんでした。彼らの働く場=生きる場を作ることは、そのまま私自身の生きる場をつくることなんだとあらためて思います。一緒に活動しているたくさんの人にとっても」。

 

 文章を書いたのは、高崎明さん。養護学校の先生をしており、来春、定年退職する。それと同時に、横浜市緑区の商店街に、障害者が働く「カフェベーカリーぷかぷか」(http://homepage3.nifty.com/pukapuka/)をオープンする予定だ。

 

 「仕事をしてお金を稼ぎ、それで生活をする」ということは、自立の第一歩だと思う。私自身、就職して初めて給料を手にした時には、「社会人になった」という自信が沸いてきた。働くことで精神的にも自立できた気がする。障害者が働く機会を持てる社会は、高齢者や子育て中の女性も働きやすい社会にちがいない。そんなことを考えて、「障害者が働く場」を調べていたとき、高崎さんに出会った。

 

高崎さんから話を聞くなかで、私は「ぷかぷか」にさらに大きな可能性を感じている。「ぷかぷか」は、「障害者が働く場」というだけでなく、「地域で暮らす一般の人たちが障害者と出会える場」という位置づけを持っているからだ。

 

「障害者と一緒に生きていったほうが『得!』という感じです」。

高崎さんは、障害者と付き合うなかで様々な魅力を知り、こう実感している。私は、まだ、この感じを知らない。「ぷかぷか」を追いかけて、この感じをつかんでみたいと思っている。

プロフィール

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  • 由香里
  • 出版社勤務の会社員ですが、障害者に関連するテーマで取材し、市民メディアOurPlanetTVのWebサイトなどで発信しています。障害者の就労について関心があり、働く場が広がっていくような情報発信をしていきたいと考えています。
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